全く本を読んだことがない社会人2年目が読書を始めてみるというこのブログ。
89回目は天童荒太さんの『包帯クラブ』について書いていきます。
前回読んだ精神科医の宮地尚子さんのエッセイ『傷を愛せるか 増補新版』で紹介されていて、気になったので早速読んでみました✨
読んだ感想を書いていきます!
※内容に触れていますので、未読の方はご注意ください。
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天童荒太著『包帯クラブ』を読んでみた
1986年、「白の家族」で野性時代新人文学賞を受賞し、映画の原作や脚本を手がけながら山本周五郎賞を獲得した『家族狩り』等人気作を出してきた天童荒太さん。
本作『包帯クラブ』は2006年に刊行されるとベストセラーとなり、映画化もされています。
ちくま文庫に2013年に収録されてからも名作として読者を獲得し続けている作品です!
傷を抱えた高校生たちが、自分たちの大切なものを守ろうとするお話。
青春小説ですが、大人が読んでもめちゃくちゃ感動できます!
あらすじ
↓今回もあらすじをまとめました!↓
これは、わたしたち「包帯クラブ」の途中報告書である。高校2年生だったわたしが放課後病院の屋上で町の風景を見下ろしていると、特異な格好をしたディノと出会った。軽薄な素振りを見せるディノを警戒していたわたしだったが、ディノが傷付いた場所の証として巻いた包帯がまるで本当の傷を手当てしてるみたいで、目を奪われた。その後、親友のタンシオが彼氏と別れ話をした場所に包帯を巻いてその効果を実感したことで、徐々に傷付いた場所に包帯を巻いて欲しいという人が周りに集い始める。同性への恋心に悩むギモや、中学時代の友人リスキも加わり、「包帯クラブ」は本格的な活動を始める……。
「包帯クラブ」は、傷付いた場所に包帯を巻に行くクラブのこと。
万人に効果がある訳でもないし、傷を治すための何かが出来るわけでもないけど、傷付いたことの証として包帯をまくわたし(ワラ)たち。
大人になったワラが書いた報告書という形式なので、ちょこちょこ大人になったメンバーのコメントが入るのもその間の時間を想像できておもしろい!◎
238ページと薄いのですが、その中に大事なものがギュッとつまってる作品でした。
【ネタバレ注意】読んでみた感想
傷があるとお互い認め合うことで守れる大切なものもあるんだっていうことを教えてくれる小説でした。
ディノのちょっとした思いつきから始まった「包帯クラブ」。
傷付きやすい心を抱えて生きている高校生たちが、社会を変えるだけの力は持てなくても、自分たちができるやり方で自分たちの心を守ろうとした活動は、大切なことを色々教えてくれます。
やっていることは、「ここで傷付いた」と言われた場所へ行って、包帯を巻いて写真を撮るだけ。
生まれた経済格差が無くなるわけでも、限られてしまった将来の選択肢が広がる訳でもないから、社会の理不尽さは変わらなくて、
それでも、何も変わらなくても、何も変わらないんだという証を残すことで救われる心の部分は絶対にあるんだと思わされました。
物語の舞台も秀逸で、再開発が進む富裕層エリアと、元からその土地に先祖代々住んできて、将来もパートや工場勤務をして暮らしていくことが決まっている人たちのエリアが混在する町の姿が前提としてあるからこその物語です。
「包帯クラブ」のメンバーも、同じ階級にいるわけではなく、格差の中にある色々な立場を背景にしています。
工場を運営している企業の重役側と工場のいちパート側、将来有名大学へ行くことが決定している側と進学を予定してない側、タワマン側とタワマンを作るために潰された工場側……
いたるところに格差って存在するわけで、しかもうちらと関係ない場所と人で決められている。
それが原因で喧嘩することもあるし、「包帯クラブ」の活動を続けたってそれが変わるわけじゃない。
でも、「包帯クラブ」が無ければそもそも集まらなかったメンバーで、その格差と真正面からぶつかることも無かったのかな、と思います。
タワマンに住むテンポに、高校に行けなかったリスキがぶつけた心からの言葉は、中高と私立の進学校に通っていて大学へ進学するのも当たり前だったわたしにもすごく刺さりました。
知ることだけで
『包帯クラブ』の根底には、「傷があると知ることだけで救われるものがある」というテーマがあります。
自分を一瞬でも、ある人の立場と似たところへ置いてみたいんだ。あとどうするか、知る前には、決められないよ。知ってどうするって質問、よくされるけど、それって、知ることさえも阻まれている気がする。
何かしてほしかったわけじゃない。ただ知っておいてほしかっただけなのに。それなりの事情があるんだと。もし、知ってくれているとしたら、わたしはどこかで救われたって……そういうことだったのに。
知ること。
そして、傷を「そんなの傷じゃない」とかジャッジせずに、傷と認めること。
それだけのことが、いかに難しくて、どれだけ大切なのかということを考えされられました。
特に、「包帯クラブ」の設立~活動方針決定までのワラの気付きや葛藤は、読んでいる私と同じ立場からそれを教えてくれます。
だれにでもあることだからって、軽々しくひとまとめにしちまうのは、相手の心を思いやるのをおっくうがったり、面倒がったりする、精神の怠慢からくるんじゃねえの
人が受けた深い傷に、わたしたちができることは、ほとんどないように思う。でも、相手の沈む心を想いながら包帯を巻くことで、〈それは傷だと思うよ〉と名前をつけ、〈その傷は痛いでしょ〉と、いたわりを伝えることはできるかもしれない。
確かに、「もっと辛い人がいるんだ」とか、「たかがそんなことで」とか言われて、自分の傷を傷と認められず、傷ついた自分を恥じて責めてしまうなんてこと、結構あるあるですよね。
わたしは今社会人2年目なのですが、去年の今頃、研修期間中嫌なことがあって先輩に相談したら、
「研修期間中が1番楽なんだから。配属されたらもっと辛いことが待ってるのに」とか、
「そんなこと、なんでもないよ。俺なんて〜」とか言われて、自分社会人向いてないのかな……ってめっちゃ落ち込んでました。
あのときわたしが落ち込んだのは、傷を傷と認められず、傷付いた自分が弱いんだと思ったからなんですね。
社会人なんだから他人と傷の認め合いなんかするなと言われそうだけど、少なくとも私は後輩に「研修期間中辛いことがあった」と言われたら、その傷を認めてあげたいです。
続編が出ているらしい!
2006年に刊行された本書『包帯クラブ』ですが、2022年に続編である『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』が刊行されているようです!
途中報告書である本書に、ようやく続編が追加されたかたちですね。
ディノとワラの関係性はどうなったのか……
「包帯クラブ」のメンバーはどんな大人になっていくのか……
続編も楽しみです♪
次回もどうぞ、よろしくお願いいたします。


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