「話が上手くなりたい!」「キラキラ営業ウーマンになりたい!」
そんな悩みを抱える新卒1年目が読書を始めてみるというこのブログ、20回目は最近話題のあの本について書いていきます!
その本とは……呉勝浩さんの『爆弾』です!
マガポケでコミカライズ版を読み始めたら、おもしろくて止まらなくなりました笑
コミックは完結していないようなので、気になるラストを読むために小説に挑戦してみました!
※内容に触れていますので、未読の方はご注意ください。
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『爆弾』を読んでみた
2025.10.31に映画が公開され、話題となっている呉勝浩さんの『爆弾』。
佐藤二朗さんの演技が高く評価されているようです。
主演の山田裕貴さんが番宣の際に「何度も原作を読み返している」と発言していたことから、映画ファンの間でも原作小説が話題になったんだとか!
映画は観られてないのですが、TLで流れてくる「おもしろい」という声が気になっていたところ、漫画アプリでコミカライズ版を数話読み、すっかりハマってしまいました笑
小説を読み始めてみると、犯人と警察どっちが勝つのか気になりすぎてのめり込み……
ページをめくる手が止まりません!
はじめての警察小説ですが、ドラマや映画を観ているような感覚で、500ページ超という厚さにも関わらず最後まで飽きずに読めました!
あらすじ
⇓今回もあらすじを書いていきます!⇓
酔っ払って酒屋の主人へ暴行を加えたという容疑で野方警察署で取り調べを受けている”スズキタゴサク”を名乗る男性。見るからに冴えないその中年男性は、明らかな偽名を名乗り、住所も酒屋に行くまでの行動も記憶喪失で忘れてしまったと話す。担当刑事の等々力が対応に悩んでいると、突然スズキが「自分には霊感がある」と語り、10時に秋葉原で事件が起きると予測する。そして、まさにその言葉の通り秋葉原で爆弾事件が起こり……。
ただの酔っ払いだと思っていた容疑者が都内各地に起こる爆弾事件を予告し始め、彼の「霊感」を暴くため様々な刑事・警察官が奔走するミステリーです。
もちろんスズキタゴサクの「霊感」はただの出任せで、スズキ自体が爆弾犯という前提のもと捜査が進むのですが、証拠も、次の爆弾の場所を推理する材料もなし。
あるのは、スズキが突如として出す言葉遊びのようなヒントだけ。
そんなスズキに直接対峙するのは、本庁特殊捜査員である清宮と類家。
野方警察署の取調室を中心に、スズキの思惑を止めるため最悪のクイズに挑む……。
サイコパスVS国家権力という図式のサイコスリラーもの!
『羊たちの沈黙』などが代表するジャンルらしく、私もタイトルは聞いたことがありました。
頭がいい人たちの会話が読んでいてすごく楽しいです!
取調室で直接犯人と対話する2人以外にも、野方警察署の課長や最初にスズキを逮捕した警察官、そしてスズキに若干の共感を寄せる等々力など、様々な立場のキャラクターが登場します。
共感できるキャラクターが1人は見つかりそうなところも初心者にはありがたいですね♪
【ネタバレ注意】読んでみた感想
サイコパスVS警察の対立がめちゃくちゃおもしろかったです!
サイコスリラーもの好きかもしれない……
ただ、解説にも有りますがこのサイコパスVS国家権力という図式のなかにもうひとつ、
「社会のルールはおためごかしだとして、人間の正義を嘲笑い悪意のみを信じる立場」
VS
「人間のおためごかしを秩序を維持するため必要なものだとし、人間の正義や人間味といったものを信じていこうと決断する立場」
という図式があるのが『爆弾』のおもしろいところでした!
人間を、社会を、信じるか信じないかという対立ですね。
恵まれない環境に対する恨みや、幸せそうな人への羨ましさを単純化した他者への憎悪としてぶつけてしまう人たちが企てた凶悪犯罪を止めるとこで、人間、そして社会を信じようとする力が間違っていないことを示してくれる警察側のキャラクターたちに胸が熱くなりました😢
特に、爆弾があることをわかっていながらも被害者を出してしまったと警察を非難し、普段隠している暴力性が露呈している市民たちを前に、「もう護らなくていいかな」と思ってしまったサラダちゃん。
それでも最後の選択はそれなんだ〜〜〜(号泣)
ラストのサラダちゃんの選択は本当に読んで欲しいです。
どんなに絶望を突きつけられようとも、分かりやすい結論に飛びつかず、人を信じる勇気を持てる強さに涙、、、。
また、冒頭から登場する大学生のゆかりちゃんも、SNSに無責任な言説を流し他人をこっそり見下す嫌な子かと思いきや、ラスト爆発の現場に居合わせたときの行動がすごい!
全体的に、他人を単純化して見下してばかりの「社会から外れた人たち」と一生懸命他者と生きるのを諦めない「社会の中にいる人たち」の明暗がはっきりしていて、作者が問題視していることがよく分かりました。
爆弾犯以外にも他人を見下してばかりの行動をしている人たちがいるのですが(ゆかりのサークルの先輩や爆弾犯の元同居人)、「いるいる!」とドキッとさせられる人ばかり。
リアルすぎてちょっと辛い……。
呉勝浩さんの観察眼は凄いですね。
【ネタバレ注意】犯人の動機について
スズキタゴサク含め、犯人たちの動機はすごく”今っぽい”と思います。
一見正しく見える強引な論理で相手をねじ伏せようとして、それを突っぱねる他者を「頭が悪いからだ」と単純化して見下し、そんな見下している他者の方が幸せそうなことが許せない。
解説でも、著者の呉勝浩さんは最近の「論破文化」を問題視していると書かれています。
他人の事情なんて分かるわけないのに、「自分が正しい」という思い込みから攻撃してしまったら、社会から弾かれていきますよね。
そこに至るまでに数々の絶望とか、悲惨なことがあったとしても、それを見ず知らずの人にぶつけてはいけない。
それは、犯人たちが嫌った「おためごかしの嘘」で、きれいごとかもしれませんが……。
犯人たちとルームシェアしていた人が語った、「社会への不満や他人を貶める発言をするときだけやけにイキイキとしている」という犯人像は、すごく切ないです。
無敵の人ってこんな感じかもしれないな……、と。
もちろん様々な人がいる中で、それこそ「論破文化」の中にいる人たちを単純化なんてできませんし、「無敵の人」が実際にどんな人で、どんなことを考えているのかは私には分かりません。
それでも少なくとも、正論だけが正しいわけではないことを覚えておきたいと思います。
続編が楽しみ!
『爆弾』は既に続編が刊行されているとのこと。
『法廷占拠 爆弾2』(講談社、2024年)が単行本ですが、続編だそうです!
文庫化まで待ちきれないので、早めに手に入れて読みたいです。
また、サイコスリラーものの代表作である『羊たちの沈黙』も気になります……。
少しずつ読んでいますので、次回もどうぞよろしくお願いいたします!


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